どうすれば、失敗の連鎖から這い上がることができるのか?

起業失敗談

起業のきっかけはトホホな転職!

ある日突然、その男は、デスクをひっくり返し、「こんな会社、辞めてやる!」と啖呵(たんか)を切って、職場を去って行った。
——まるでドラマのワンシーンのようです。〝その男〟とは、僕のことです。デスクをひっくり返し、というのはちょっと盛り過ぎましたが、でも、そのときの僕の心情は、まさにそんな状況でした。

一九九九年の十二月。僕は啖呵を切ってTレコを辞めました。発端は、副業をしていることが会社に知られたことです。
昨今の働き方改革で、二〇一八年に厚労省は会社の就業規則から副業禁止の項目を削除し、むしろ副業・兼業を促進すると発表し、ニュースになりましたが、二十年前の世の中は、会社の許可なく副業なんてもってのほかという時代でした。

でも、僕は副業に手を染めました。きっかけは、知人に勧められたサプリメントを飲んでみたらすっきりと痩せられたことでした。当時、ぽちゃっとした体型で、周りから「どうやってダイエットしたの?」と訊かれたので、愛用のサプリメントの話をしたのです。すると皆が欲しいという。ただ、そのサプリは輸入品で、会員にならないと購入できない仕組みのものでした。
ところが、このサプリを勧めた仲間には評判を呼んで、注文が相次ぎ、僕は会員の中でも優秀なセールスを達成して、表彰されるほどの成績を収めてしまったのです。自ら実践してすっきり痩せたので、商品に対する信用度も高く、しかも僕にはTレコで培った販売促進能力があったので、あれよあれよといううちに、成績優秀者に昇りつめていったのです。

Tレコの正社員になって四年。輸入盤CDの販促の仕事も、同じことの繰り返しで「こんなこと一生やっていくのかぁ。このままじゃあ、たいした出世も望めないし、給料もさして上がらないだろうし」と思うと、仕事のやる気もかなり低下していたので、副業で稼げるというのは魅力がありました。

僕は、正直者なので、稼げる副業があることを、誰にでも話してしまい、会社の仲間がサプリ販売をしたいというと、紹介することも厭わず……。しかし、それは会社の就業規則に違反していたので、上司に知れて大目玉!

でも、僕は謝りませんでした。「同業他社に利益をもたらす副業ではないし、副業は就業時間外に行っていて、会社の業務に支障があるわけでもなし。何が悪い!」と僕なりの正論をぶちかまして、「だったら、辞めます!」と啖呵を切って、上司に辞表を叩きつけたのでした。

そのとき僕は、三十歳。はっきりいって「ああ、やっちまった!」と予期せぬ人生の岐路に立たされました。でも、後には引けない! 売り言葉に買い言葉で会社を辞めたはいいけれど、さあ、どうする!?

サプリメントの販売は、お金は稼げるかもしれないけれど、僕は、サプリメントという商品に生涯をかけて売っていきたいというほど愛着がわかず、天職とは思わなかったのです。要するに「なりたい自分」が見出せなかった。
そんなわけで、僕は、早速、求人誌を買って、転職活動に身を投じました。

一九九〇年代の後半は、インターネットが猛烈なスピードで普及し始め、二〇〇〇年を境に、世の中の最先端の仕事はIT(情報技術)産業一色になる勢いを感じていました。実際、求人誌のどれを取っても、巻頭カラー特集はいわゆるIT系企業ばかりで、「やっぱ、これからはインターネットビジネスなんだよ!」と、僕のモチベーションは一気に上がりました。

そんな中で、いち早く採用の通知をくれたのは〝インターネットシンクタンク〟という分野の会社でした。社名も「〇〇総研」。カッコいいなあ、としびれましたね。

その会社は、設立してからの年月も浅い会社で、社員も転職組ばかり。前職は旅行会社の○TBにいたとか、ゲームで有名な○ガにいたとか、いかにもヘッドハンティングされたエリート感満載のオーラを放っている先輩もいて「すごい会社に転職できた、俺ってラッキーかも!」と思いました。

ところが、このシンクタンクはとんでもないヤバい会社だったのです。
その会社には実はお金がなかったのです。でも親会社が、大手新聞にも一面広告を載せるような会社だったので、誰もがそこの子会社なら、お金もたくさんあると思うわけです。
ところが親会社自体が、勢いがあるように見せかけて、実態は虚業の会社。どうやら法律スレスレのところで、出資金を集めているような限りなくグレーゾーンに染まった会社で、案の定、のちのちその親会社も潰れてしまいました。

僕は入社してから、だんだん会社の実態が見えてくると、直感的に「この会社ヤバいかも!」と思い始めていました。
実際、転職して三ヵ月で、いきなり給料が払われなくなる事態に!
「おいおい、ベンチャー企業に投資する会社が、給料未払いって何?」
要は、まともに投資できる会社ではなかったのです。また、僕自身がそのからくりにまんまと乗せられることになろうとは!!

給料が払われないとなれば、当然社内では、このシンクタンクは、あと数ヵ月も持たないだろうと噂が立ちました。実際にこの会社も潰れてしまうのですが、噂を耳にした時点で、僕はとんでもないトホホな会社に転職したものだと、がっくりしました。

またもや人生の大失敗です!

シンクタンクの社員は、みな戦々恐々! さっさと見切りをつけて辞めていく人もいましたが、転職したばかりの僕は、「また就活なんて、勘弁してほしいよ!」とブチブチ文句を言いながらも、好奇心からでしょうか、このヤバい会社がどうなっていくのか? ちょっと見届けたい気分にもなっていました。

その能天気さがまた、この先のトホホな起業に繋がっていくのですが!
僕は、転職がきっかけで、失敗の連鎖にはまってしまったのです。

なぜ、失敗の連鎖にはまるのか?
どうすれば、失敗の連鎖から這い上がることができるのか?

その答えは、  『崖っぷち社長が教える! ピンチを乗り切る「なぜ?」「どうする?」の使い方』 の33~35ページをご覧ください。

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