なぜ、僕は訴えられたのか?

起業失敗談

こんにちは。「崖っぷち社長」こと殿木達郎です。
会社経営を長年やっていると、裁判沙汰になることがあるかもしれません。訴えることもあれば、訴えられることもあり、僕は原告と被告の両方を体験しました。
その時のエピソードを書籍から抜粋しました。

訴えられて!訴えて!

原告の方は、「売り上げが回収できなかった=納品した相手先にお金を払ってもらえなかった」ので、訴えたわけです。しかし、結論から言いますと、お金は踏み倒されて、一円も回収できませんでした。

一方、被告の方は、かいつまんで言いますと、身に覚えのない借金を返せと訴えられたのです。僕の認識としては、仕事に対する対価を支払ってもらった、つまり売上金としていただいたお金だと主張したのですが、相手は貸した金だとの一点張り。これも裁判に負けて、借りてもいないお金を泣く泣く月賦で返したという苦い経験をしました。つまり僕は、原告でも被告でも裁判に負けて泣き寝入りで、またまた〝崖っぷち社長〟にふさわしい(?)大失敗だったわけですが、これを教訓に、気持ちを引き締めて仕事に臨めるようになったことは、価値ある体験だったと思っています。

なぜ、僕は訴えたのか? そして訴えられたのか?

まずは、なぜ原告となったのか? その経緯をお話しましょう。
それはまだ、会社を立ち上げたばかりの初期の頃です。会社の売り上げになるならなんでも仕事をやろうとがむしゃらだった時期で、来るものは拒まず、なんでも引き受けていました。

そんな中に「ある不動産会社で使うコンピューターのシステム開発の仕事を請け負ってほしい」という依頼がありました。会社ではWEBに関わることは積極的に仕事にしていましたが、コンピューターのシステム開発というのは分野が違います。

ところが音楽屋の僕から見ると、ざっくりとは同じIT分野だと思って引き受けてしまったのです。しかし、社内スタッフでは手に負えないことがわかり、システム開発に明るいスタッフがいる会社を必死に探して、アウトソーシングの形でなんとか仕事が進められるように体制を整えました。

予算は五百万円。システム開発には高度な専門知識・技術が必要で、満足のいく形に仕上げるために、その予算では実は安すぎて、無理を強いた仕事だったのですが、一緒に組んでくれた会社は「殿木さん、これじゃ儲からないと思いますけど、なんとか赤字にならないようにしましょう」と、協力的に頑張ってくれました。

そして、納期に合わせてしっかり完成させたのですが、不動産会社に請求書を出したものの期日になっても入金がない。そこで催促したのですが、「ちょっと支払いを来月まで待ってほしい」と言うので、もしや取りっぱぐれるのではないかと心配になりました。しかし、ひと月経っても払ってくれません。

次なる手段として、内容証明郵便で再度請求しましたがなしのつぶて。やばいぞ、不渡りが出て倒産してからでは遅いと思い、訴訟に切り替え、相手の会社の口座から引き出せるように強制執行の手続きを取ることにしました。そのために、原告の僕は目黒にある強制執行の事務所(民事執行センター)まで赴くのですが、これが目黒駅から歩くこと三十分。当時はスマホの地図アプリなんて便利なものはなく(実は最寄り駅は目黒ではなく学芸大学だったのですが、目黒付近に明るくなくて)、道に迷いつつ汗をかきながらようやく辿り着いたのには参りました。

そして、いざ強制執行! しかし……相手の銀行口座にお金が十三円しかなかったのです。もうギャグとしか言いようがない結末ですよね。請求した五百万円はもう回収できないことがわかり、僕は愕然としました。しかし、アウトソーシングしているので、僕は外部委託先に支払わなくてはなりません。僕は泣き泣き、なけなしのお金を支払ったのです。外部委託先の頑張りを目の当たりにしていたし、ちゃんと支払わないと今度は僕が訴えられますから。

さて、今度は被告になった原因です。これは役員だったBさんの案件で、E社という広告代理店と仕事をしたのですが、お金を振り込んでくるのは別のF社だとBさんは経理に告げました。「この仕事はF社からのアウトソーシングされた(つまりは下請けの)仕事だ」とBさんから説明されたので僕も納得したのです。

問題が起きたのは、Bさんが会社を辞めてから数年後、F社から「〇年前に貸したお金はいつ返してもらえますか?」と催促がきたのです。寝耳に水です。借りた覚えのないお金をどうやって返せと?

F社の言い分は「おたくの資金繰りのために、Bさんを信用してお金を貸した」との一点張りです。「いえいえ、お金を借りたのではなく、F社の下請けで、我が社はE社のお仕事しました。その製作費を請求して支払っていただいたはずでは?」とこちらが言っても、そんな仕事は発注していないし、請求書も貰っていないと言われてしまい、埒らちがあかなかったのです。Bさんはもう会社を辞めているし、調べてみるとBさんがF社に対して請求できるような「仕事をした証拠」もなく、借金ではないことを立証することができなかったのです。

当時、経理のことはBさんに任せっぱなしでしたから、Bさんの都合のいいように処理されていたというわけです。おまけにF社は「殿木とBはグルだ」とまるで僕まで詐欺師呼ばわり。僕は絶対認めたくはなかったのですが、刑事事件にされてもはなはだ迷惑なので、お金を返せばすむならと相手の要求を呑むことにしたのです。しかし、返すお金などはなく、頭を下げて、月々分割返済にしてもらったという、情けないことこの上ない敗北でした。

どうすれば、裁判は避けられるのか?

この続きは、  『崖っぷち社長が教える! ピンチを乗り切る「なぜ?」「どうする?」の使い方』 の155~159ページをご覧ください。

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